ゲーム+α日記('99年11月)

'99年 10月 9月


11/29

 「逃げる」ってのは便利な言葉だ。自分は世界の中心に立っているという認識のもとに、違うところへ行こうとしている他人を糾弾するための体のいい小道具。
 離れていってほしくないなら素直にそう言えばいいのに。構ってもらいたいならそちらから出向いてくるのが筋ってもんだろう。

 平清盛もきっと、沈む夕陽に向かって「逃げんのかコラ」とか毒づいたに違いない。そのせいで戻ってきた太陽の熱に浮かされて、彼は死んだ。
 違うか。

 エヴァンゲリオン20話まで視聴。


11/28

 相手の都合お構いなしにこっちの話を聞いてくれろと呼び出すなんて失礼だ。
 そう思うので、少なくともこちらからはなるべく電話をかけないように心がけてきた。それは携帯電話を持つようになったこれからも同じ。
 で、邪魔されたくないひとときに電話がかかってくればこれは当然疎ましく思うのだけれど、これまではあの無機質な呼び出し音が電話に出るよう強迫してくるように聞こえ、なぜか受話器を取らなければならないような気にさせられてしまっていた。

 これからは違う。好きな曲が着メロとして流れてくるのだから、電話がかかってくるのを煩わしがることはない。心ゆくまでメロディーに浸り、聞き飽きてなお電話に出る気になったら初めて受信ボタンを押せばよい。
 これってすごいことだと思う。着メロ作成機能に、電話に出ない権利を楽しんで使えるようにする、なんていう追加効果があるなんて。

 ということで、もし私が携帯電話での呼び出しにすぐ応答しなかったとしても、奏でる調べに聞き入っているだけで決してあなたのことを嫌っていたりはしないので、勘違いしないで下さい。どうしても用事があるなら40〜50秒も待っていただければ、いかに名曲といえども2周ループを聞き終えて満足すると思います。

 あ。発信者別に違う着メロを割り当てることもできるのか。それはまずいな。


11/27

 強風と大雨と底冷えのくに秋田(3つを調合すると吹雪の出来上がり)から帰りついたのが昨日と今日の境目。そんな印象しかありませんだって会社と宿泊先のホテルを往復しただけだもの。
 23日に書き殴っておいたネタをばほぐしていくことに。

  • シルバーガンで自己ベスト
 22日に遊びに行った新宿で1年越しのハイスコア、名前を残せてうれしい。さっそくうちのページも
更新する。
 折しも12/12に大会があるのですよ大会が! ぜひ出場したい方向で必死に努力(主にスケジュール調整で)していきたい気持ちに傾いております。もちろん練習も忘れずにね!
 大学時代の研究室のメンバーと上野で飯食った帰りに目撃。鉄拳TTを見た直後でありショックも数倍。指さして大笑いしたのち団体でなぜか対戦大会が始まる。
 やがて熱気が醒め、後輩(ゲーム初心者、もちろん初プレイ)が乱入されないまま取り残されて放置の刑…のはずだったのに堂々クリアを果たすなど妙な盛り上がりを(ゲームの外で)見せたイベントに。
 サターンで出すそうな。そういやST-Vの文字がインストカードに踊っておりました。無期延期でもいいのではないかと。
 見本の「ライディーン」だの「デイドリームビリーバー」だの「カノン」だのが超絶に気合いの入った出来映えで驚く。確かに「カノン」なんかは和音で追いかけてサマになる曲だものなあ。
 これは負けていられないね、とばかりに題名つながりで「Kanon」のあんな曲を入れたり、「ファイナルファンタジー6」のこんな曲を試したりしたが、音色のせいだろうファミコンの曲がかなり良い塩梅に再現可能。FFシリーズのオープニング(タイトル画面じゃなくて)がお気に入り。
 楽譜の最後と最初がスムーズにつながるのにも感心する。ってこれは旧機種でも同じか。とにかく曲を打ち込んで鳴らすのが楽しい。買って良かった。
 他にも時刻表示するし目覚まし機能もついてるし電卓も装備、ちょっとした辞書代わりにもなるなどえらく高機能で満足。何とその上電話までかけられるすぐれもの! というかまだかけたことないんですけど。電話機能は必要ないです今のところ。
 これだったらゲームやった人なら誰でも書ける。ゲームから音楽を除いて分岐を除いてグラフィックのほとんどを除いて、セリフがゲームそのままテキスト化、挿し絵もゲーム内イベントのグラフィック。二次出版物の原作からの引用はゲームを遊んだ人がたまにニヤリとする程度に留めるべきだと思うのですが。「何も足さない。引いただけ」というウイスキーのコマーシャル(ちょっと違う)を思い浮かべた。
 このパラダイムノベルズっていうシリーズは異様な数のラインアップを誇っているけれどみんなこういう作りなのか。それなら量産できるのも分かる。
 もう少しひねりを利かせましょうよ。例えば女の子の一人がロボットだった、とか。俺だったらそうするね!

 ファミコン時代にやたらとゲームブックが流行って、ドラクエはともかくスーパーマリオとかお前はアクションだろっていうような無茶なものまでゲームブック化されたものだけれど、最近はノベライズ一色。
 ノベルゲームをゲームブックにするとゲーム内容が少なくともテキストベースでは完全再現できてしまう、それがまずいせいかもしれません。

 あとレジで「しおりをお付けしましょうか」なんて聞いてきたので、普通つけるだろ、なんか恩着せがましいな、それとも最近は経費削減でしおりも節約してるのか、とちょっと戸惑ったが、もしかしたら登場キャラの名前と引っかけていたのか、と思い当たったのがついさっき。二度と手に取るつもりもなく放り出しておいた本をめくって絵柄を確かめてみたらずばり。
 そのときの店員の表情なんか覚えていないけれど妙な目つきとかしてたのか? ファンなら思い当たるだろうといった類の? 萌えてないっつーの。生暖かい連帯感を押しつけるのは勘弁してほしいです。

 以上。
 明日までの期限で4本借りてしまったエヴァンゲリオンを頑張って消化する今夜となりそう。


11/23

 ひー。シルバーガンでほぼ1年ぶりに自己記録を更新したとか、格闘アレルギーのこの俺に連コインさせるとは侮り難し「ファイナルファイト・リベンジ」(二度とやりません)とか、衝動買いした携帯電話の三音ハーモニー機能は入力した本人が思わず赤面する曲を忠実に演奏してくれてすばらしいとか、出ているのを知ったからにはと買ってしまった「Kanon」ノベライズ版は小説というより元ゲームの台本みたいなものでがっかりしたとか、結構いろんなネタがあるけれども今はとりあえず並べるだけ。
 これから週末まで出張にて更新できず。エヴァンゲリオンを見ている暇もなくなった。無念。


11/21

 既に完成品として世に出たものに接して出てくる感想というのは十人十色に違いなく、そのことさえ留意していればどんな思いを、あたかも作者から直にメッセージを受け取ったかのように熱く語ってもよいはずです。例え作者の意図した主題があって、それが受け手の感じ方とは別のもので、かつそれを作者が明らかにしたとしても。
 表現者の豊かな知識・経験のバックボーンが見え隠れする感想文を読むのは楽しい。罵倒や皮肉一辺倒でないものが特に。
 そんな文章が書ける方々をうらやましく思います。


11/19

 「ドラクエ7」発売延期を嘆く会話が、退勤時の職場でも盛んに交わされていた。こんなにもドラクエを心待ちにする、普段はゲームのことなど口にもしない人たちを目の当たりにして、ドラクエの偉大さに改めて気づかされた思い。
 個人的にはこの調子でさらに先延ばしにしてもらえれば嬉しい。ゲームに使える時間に比べて、遊びたいゲームが多すぎる。
 「延ばすな」って怒るのとどっちが身勝手か。どちらの思惑にも関係なくゲームは作られ、売られる。


11/18

 ♪ざ・ん・こ・く・なてんしのテーゼ、って何年前のブームか知れないエヴァンゲリオンをビデオで見ている。一日一話のペース。
 この主人公は14歳か、その年齢がうらやましい。若いうちに好きなだけ悩むのがいいだろう。でも彼は任務を負わされているから勤め人と同じか。気の毒な。


11/15

 「マネーアイドルエクスチェンジャー」は早々にCDケースに戻される。そろそろ「シルバーガン」に復帰しないと。せっかく近場にアーケード版を見つけたんだから、リハビリして少しはいいところを見せたいのです。
 しかしどうにもやる気が。今の心境を3文字で表すなら腑抜け。暇ができたら何をしているかと思えば「プリズマティカリゼーション」の顕わには示されない世界観を想像で補完して喜んだりしており全くもって腑抜け。
 「世界観」が「女の子」でないだけマシか。そう思おう。もっとも、あのゲームを遊んだ上でなおギャル萌えできるなら、それはそれで感心できたりしなくもない。


11/14

 「こいつら(それを見ている自分を含む)何やってるんだろう」と思わずにいられないアダルトシーンを満喫したので「To Heart」への気持ちが急激に収束に向かっている。
 あと4人残っているんだよなあ。どうしよ。

 気分転換に1600円6人衆から「マネーアイドルエクスチェンジャー」をちょっと遊んでみた(よし! さらっと言い切ったぞ)が…これは。
 言うなれば
 「『ティンクルスタースプライツ』(特にサターン版)の悪いところを一手に引き受けて増幅させた『マジカルドロップ』改良版」
 なかなか面白い(本家よりこちらの方が好き、ただしキーレスポンス悪し)ゲーム本編、その前後を隙間なく覆う駄目すぎる演出。キャラ・声・絵をただ足しただけ。ストーリーモードなんか目と耳をふさぎたくなる出来。
 丹下桜の奮闘ぶりだけが空しく響く、それさえも若干のノイズに邪魔されて。
 とほほ感倍増。


11/13

 それではストレスは何で飛ばすかというと、自分の場合どうも買い物らしい。
 やれもしないのにゲームをがつがつと漁っていくと気が晴れるみたいだ。まるでご婦人がブランドもののバッグだの靴だのを集めるように。
 目の前に並んだ6本のPSソフトを嘆息混じりに眺めながらそう思った。

 それにしても、去年に出た新品ゲームが1600円均一っていうのはどうしたことだろう。商売する気はあるのか。そしてこれらを買ってもいいのか。後ろめたさを感じた。
 結局買ってるんですが。見逃したって状況は変わらないだろうし。


11/12

 言い渡されたその日に出張、2日で計20時間の電車旅。くたくた。酒を飲んでいないのが救い。
 「ストレスはアルコールで発散」という文化は、まだ私には根付いていない。

 もう寝てしまいたいところだがそうはいかない。時間に限りがある以上、睡魔に負けてしまうのはふがいない。闘う。
 …ゲームやその他諸々のために。

 と、そんなふうに言い切る自分はロドニー・グリーンブラットがデザインするところのペラペララッパー並みに薄い人間であることを思い知らずに生きていくことのできない今日この頃です。
 マジでこんな発想しかできないんだもの。
 自分が無力であることを、あとどれだけ深いレベルで知覚すれば、そこから抜け出すための行動に移る気になるのか。
 レベル。レベルも駄目か。連続的でなければ駄目か。


11/9

 Memorial Games更新:爆裂無敵バンガイオー。熱中、失望、そして和解の道のり。

 どうにも「プリズマティカリゼーション」の用語集を作りたくなってきた。やたらに多方面に分散した主人公の知識を拾い上げて、ゲーム内容に即した解説をつけてみたい。タイトルもすぐに思い浮かぶ。「エンサイクロペディア・プリズマティカ」なんてどうか。「カ」で止めるとそれっぽく響く。

 しかしそれは大変な難事であることもすぐ分かる。
 例えば「ブラジカンテル」という単語が出てくる。それが薬品名(肺吸虫の治療薬…だそうな)であることはゲーム内で述べられているので、その方面の専門書に当たれば詳細を知ることができるだろう。
 しかし、主人公はこの言葉を、話し相手が読書から得た知識の広さを試す意図で用いている(そういう奴なんだコイツは)。であるからには、彼が読んだであろう、この語が登場する小説なり随筆なりも明らかにしなければならない。それが「プリズマ百科」としてのあるべき姿だと思うし、このゲームをギャルゲー文脈で語る固定観念から外すのに適した企画でもあるはずだ。が。
 やってられっかそんなこと。それができるのはシナリオライターただ一人。月末発売という攻略本には、ギャル絵の付録でも何でもいいから、小説「パラサイト・イヴ」なみに本筋から外れたウンチクを滔々と披露していただくことを切望します。

 何もかも一人でこなそうと思うからいけないのかも知れないけれど。参加企画にしてしまえば楽なのかも。いや、誰も参加したがらないか。


11/8

 実は「グラディウス外伝」もちまちまと遊んでいたりするのだが、学習能力に乏しいせいかいつも同じところでやられる。
 そのたびに"Get out of here! Forget about it!" "Ha, ha, ha, ha, hah."(英語は推測)と小馬鹿にされて悔しいことこの上ない。グラIIから台詞口調ともさらに磨きのかかった罵倒芸にムッとして、ついPSの電源スイッチに反射的に手を伸ばす、その繰り返しが続く。

 それでも、レーザーを様々な角度に散らす障害物というアイディアに感心し、分散するビームの軌道に見とれているうち、「プリズマティカリゼーション」における時間の観念がビジュアルで閃いたような気がして、思わぬところで得るものがある(結局そこへ行き着くのか)。


11/7

 少し遠出した先のデパートで、アーケードゲームの筐体が並ぶ一角を見つけた。

 よくある風景だ。UFOキャッチャーなんかと一緒に、親が買い物するあいだ暇な子供たちに遊んでもらえるよう、当たり障りのないゲームが適当に並んだ明るい空間。
 でもその中に、場の雰囲気にどうにもそぐわない、見慣れた画面があった。
 …「シルバーガン」じゃないか!

 ゲーセンにはまず置いてないのに。やるなマルエツ安食店。さっそくコインを大投入。ほぼ一ヶ月ぶりのプレイに懐かしささえ感じながら――
 あれ? なんか敵配置が変だ?

 どうも難易度設定が変えられているみたいなので、少し迷ったがダメもとで直してもらえないかと交渉してみた。
 快諾。アミューズメント宝島(うろ覚え)の責任者の方に感謝。「でもこれってすごく難しくないですか?」と聞かれたが、ノーマルじゃないのなんて駄目なんです体が受け付けないんですッ! とか力説して変な目で見られても嫌なので「いや大丈夫です」などと適当にお茶を濁す。

 コイン再投入。始めて10分ほどは真面目に稼いでいたが、やがて右肩の方角から、腰掛けている自分と同じ高さの目線を感じる。画面の反射光でそちらを窺うと、デパートならではの、ゲーセンではつかない種類の小さなギャラリーが二人連れで見ていた。
 ちょっと話したところでは「シルバーガン」をほとんど知らない様子。なのでそれ以降はあまり粘らないことにし、先のステージを見せてあげる方針に変更。

 それでも時間はかかる。4面が終わったところで彼らは走り去っていった。次が見せ場なのにと少し残念に思ったが、気持ちを切り替え、薄れている手順を記憶から引っぱり出すことに集中する。
 5面スタート、とほぼ同時に甲高い声と複数の足音が。

仲間を連れてきた

 小学生5人にぐるりを囲まれ、結構な緊張感の中で迎える戦い。恥ずかしいプレイはできないとかなり必死、それが快感でもあったのは俺って見せたがり? と疑問に思うハッスル(死語)ぶりで何とか1ミス920万点にまとめる。
 サービスで6面ボスの攻撃を全形態見せ、最終面もミスらずにつつがなく終了。
 ついでにエンディングも飛ばさず見せてあげよう。その後で「みんなも遊んでやってくれよナ!」と爽やかに語りかける…つもりだったのに、アニメ絵が出た途端にゲーム終了を悟った子らは一目散に駆けだした。
 子供って正直だなあ。

 すごくいい気分で買い物を済ませて帰宅。また来よう。
 あの子たちに「シルバーガン」の面白さを少しでも伝えることができただろうか? 今日の出来事をとっかかりとして、ステージ5A前衛で38000までしか取れなくて密かに首を垂れたところまで追随してくれる若いプレイヤーの誕生を夢見てもいいだろうか?
 なんつーことを思いながらの帰りのドライブ、BGMは昨晩録った「プリズマティカリゼーション」なんだなこれが(ぶち壊し)。


11/6

 「プリズマティカリゼーション」をゲーム雑誌がどのように扱っているかを調べに本屋へ行く。
 予想通りとはいえ冷ややかだ。「主人公に感情移入できない」「繰り返しプレイが苦痛」というのが二大ネックであるらしい。
 後者は興味のないゲームにも接しなければならないレビュアーの時間的ゆとりのなさを気の毒に思うほかないけれど、前者の理由で嫌いならそれは仕方がない。
 人生に確固たる自信を持てている人なら、このゲームの主人公を含めた登場人物に共感できないだろう。心底からうらやましく思う。

 「電撃G'sマガジン」だけが大きくページを割いて特集。こちらも予想通り、ギャルに的を絞った紹介の仕方で、主人公の言動を一切載せないという割り切り方で難局を乗り越えていた。
 確かに、

 全肯定は全否定と本質的に変わりない。

 「コギト・エルゴ・スム? デカルトの戯言など忘れればいい」

 彼女が未だ口唇期のわけがないが、これが彼女の癖なのか…

 いわゆるデジャ・ビュは、脳内処理の混乱に過ぎないという。

なんていう彼の思考やセリフは、ギャルゲー専門誌にはそぐわない。宣伝の仕方としては正解だ。

 しかもシナリオがまた難解。分岐条件も交えた断片的な情報をメモっていったら今やノート10ページ分に。雰囲気にだまされて面白がっているわけじゃないと思うけれど。
 「難しい=偉い(良い)」という、学問でも相手にするような感情は、拒絶の裏返しでしかなく、真の受容と理解にはほど遠い、とこのゲームの主人公なら言うだろうか?

 このゲームを楽しめそうな人を自分の狭い交友関係から探ってみても一人くらいしか思い当たらない。だから大いばりでお勧めはできないし、ましてや買えなどとは絶対に言えない(あのパッケージだし)。それが残念だけれども、自分だけが知っているという独占欲を長いこと保つこともできるだろう。

 「To Heart」は幼なじみシナリオをクリア。よい話やねえ。そして、「ONE」スタッフがどんな邪念を発揮してこのゲームを参考にしたか思い知る。
 気の毒なのは「ONE」の幼なじみ。彼らの腕が「Kanon」の域まで達したことを喜ぶのみ。
 なんつって偉そうな。


11/5

 「プリズマティカリゼーション」の言う「サークレイト・アドベンチャー」では何がサークレイトしているかというと、それは時間。
 プレイヤーはある夏休みの同じ一日を何度も繰り返し、ちょっと行動を変えて新展開を迎える、その積み重ね。
 リプレイそのものを目的とさせる意味では「トルネコ」のアドベンチャー版、ただしこちらには確率要素がない(厳密には少しあるけれど、ゲームの本質ではない)。

 確率に弄ばれるのがローグライクゲームの醍醐味なのにそれをカットしているため、システムの核だけ取り出した状態では遊んでいてそれほど楽しくはない。このゲームが優れているのは味付けのうまさで、背景設定やシナリオ、主人公の屈折した性格(全てが必要なわけではと思うが…)がこのシステムと絶妙にリンクしている。

 しかしゲームの方でプレイヤーを相当選んでるな。入り口(パッケージ)でほとんどのゲーマーを拒絶し、ゲーム内容で大半のギャル至上主義者をふるいにかける。しかもこのフラグ構成は担当者が一人だからこそ構築できたと思われる複雑さ、共同で作っていたらこうまで分かりにくくはならないだろう。
 残るのはどれくらい? 身よりのない少女から「お兄ちゃん」と常に呼ばれながら、残る余韻の大きさを、萌えなどという感情から遠く離れてしみじみと噛みしめられる人が何人いるだろう?


11/3

 いや、プレイを始めたときから分かってはいた。
 「プリズマティカリゼーション」の主人公を笑えるほど立派な自分ではないということは。
 ギャルゲー一般における女の子と主人公との交流の非現実さを楽しむように、この主人公が持つ、自分の嫌な性格を非現実的なまでに誇張したところを、ゲームである以上当然楽しんでいいはずだ。自分が同様の醜い傾向を持つからといって、笑っちゃいけないということはないはずだ。
 それでも、主人公の「自分で決断し行動することなく、ただ流されて生きてきたから、過去の記憶が驚くほど薄い」という述懐などは、実感として頷けてしまいとても笑うどころではない。
 アドベンチャーゲームには疎いから、これが過去になく斬新なシステムのゲームかどうかは分からない(「サークレイト・アドベンチャー・ゲーム」というのがこのゲームのウリでもある、はず)。でも、企画・シナリオ・プログラム・キャラデザ・グラフィック・サウンドまでたった三人しかスタッフの名前が出てこないこのゲームは、他の人が何と言おうと自分にとっては面白いし硬派だと思う。

 「To Heart」も進める。ほぼゲーム漬けの一日となった。
 消化されないイベントが順に後ろの日に繰り越して並んでいる様子は「ティーンズパンタクル」っていうゲームブックが思い出されて懐かしい。作者さんは今何をしておられることやら。


11/2

 やば。一人分クリアして一気に力の抜けた「To Heart」の隙を「プリズマティカリゼーション」に突かれまくり。
 この、理屈をこねているうちに行動すべき時を逃し、それをしも他人のせいにするヘタれロリコン主人公が最高。これからプレイする人は、選べる一人称を「僕」にするともっと雰囲気が出るだろう。
 ぜひこのゲームを、ゲーム批評あたりの難しいことを知ってそうなレビュアーにガツンと解説していただきたい。



Back
inserted by FC2 system