Boom Boom Rocket

「手軽さを支えるバランス」



 『Boom Boom Rocket』は、流れる曲のメロディーに合わせてボタンを押し、画像と音のエフェクトを楽しむ、タイミングアクションゲーム、いわゆる音ゲーです。
 舞台は夜の上空。ゲームを始めると、カウントダウンの後に曲が流れ出します。ビルの建ち並ぶ下界を見下ろしながら、空中を舞うように景色が動く中、ぽつぽつと光が昇ってきます。
 画面上方には横線が引かれています。昇ってきた光がこの線上に届いたときにボタンを押せれば正解。尾を引いていたその光は、破裂音とともにその場に花火を咲かせます。
 光は4種類、色に合わせてパッドの右手側4ボタン(あるいは左手側の方向キー)が対応しています。曲に合わせて火種が次々に線に到達するので、指定のボタンを順次押していき、大空を花火と音で満開にしましょう。

 火種の並びで表される楽譜が、画面一杯に大ざっぱに示されている点は、本作の音ゲーとしての特徴と言えそうな気がします。
 火種を叩く順序と登場した順序は同じで、高速で飛んできて前の火種を追い抜いたりはしません。それに対して、画面横方向、つまり進行と垂直方向については、同じ色の火種が、画面のあちこちから登場します。色と横軸が対応していないのです。クロスこそしませんが、斜めに飛ぶものもあります。
 ボタン入力によって曲を演奏するわけではなく、どのボタンを押しても同じ効果(花火の破裂)なので、位置が音色を示す通常の楽譜とは事情が異なり、色と位置が揃っていなくても不思議なことはないのですが、その構成によって反射神経を問う方向で難しさが上がっています。
 その一方で、キーの種類は4種しかなく、同時押しもありますが2種までで、指さばきの華麗さを競う方向ではそれほど難しくはありません。
 それでも、難しいモードでは花火の数が増えるのですが、そこにはボタンの配置に結びつけられた部分的な秩序があり、決してでたらめな順番ではないのです。例えばXAYABAYという配列は矢印の一筆書きのようで、速いテンポでこの順の入力を求められる場面では、短く「矢印」と圧縮された記憶を展開させた上で入力できるかどうかというような、指先だけでなく頭の回転も絡めた緊張感を楽しむことができます。
 キー入力に関してこのように秩序を持たせることで、アクション・記憶という2要素への負担が適度に反射神経の側へ散らされています。これによって、気軽に遊べるバランスが取れており、これは地味ながら本作の美点であると思います。

 曲数は当初の10曲に無料の「ロックパック」ダウンロードで5曲追加、それぞれ難易度別に3段階で楽譜のバラエティは計45種。価格や、オールクリアの達成感を味わえる点を考えると、妥当な規模だと思います。全曲、クラシックを元に現代風のアレンジが施されており、聞き覚えのあるメロディーと曲調のミスマッチ感が楽しめます。
 難しいパートの入力をある程度端折るなどの割り切りが効くのでクリアだけなら割と寛容、しかしひとたびスコアを目指し出すと、タイミング判定が厳しいために向上の余地が大いに残されていることに気づきます。
 総じて手軽な作風においても修行を求める向きには、スコア狙いの他にも、テンポが時間とともにどんどん上がるエンドレスな耐久モードもあります。その一方、適当に入力してもゲームオーバーにならない花火観賞モードも搭載。風景を遮る邪魔者だった正解判定用の横線も、ここでは消えてくれます。

 海外製の本作を日本のXbox LIVEアーケードでも配信するにあたり、日本語訳をつけてくれたのはいいものの、それが全編通じて目を覆いたくなる出来映えなのが玉に瑕。文字(letter)を「手紙」と訳して憚らないこのローカライズ精神がゲーム内容に持ち込まれなくて、本当に幸いでした。
 花火の色と音(特に後者)が曲とかぶさり、地の曲のノリとともに入力に手を弾ませる感覚が楽しい。短くも長くも遊べる、フットワークの軽いゲームです。

('08/2/13)

Boom Boom Rocket

発売元:エレクトロニック・アーツ(開発元:Bizarre Creations)
機種:Xbox360
発売日:'07年11月30日(Xbox LIVEアーケード配信)
プレイ時期:'07年12月〜'08年1月
購入価格:1,200円(800マイクロソフトポイント)
初期10曲+ロックパック5曲の全難易度で評価A獲得



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